「なぜあなたはそのサイトで買いましたか?」ユーザー目線で考えるECサイト差別化3つのヒント

『ECサイトのゴールデン・サークル〜こんなECはイヤだ!〜』鷹野雅弘さん

ユーザーが商品を買うECサイトは一つです。ユーザーは同じ商品を別々のECサイトから買うことはありません。ユーザーは一つのECサイトを選び、商品を購入します。

ではユーザーはどのECサイトから買うのでしょうか。ユーザーから選ばれるECサイトであるためには何が必要なのでしょうか。ユーザー目線で考えるECサイトで気をつけたいこと、差別化するための3つのヒントを紹介します。

対象読者 : ECサイトを運営している方

この記事を読んで理解できること : ECサイトを運営することで気をつけたいこと、差別化のヒントをつかめます

『ECサイトのゴールデン・サークル〜こんなECはイヤだ!〜』鷹野雅弘さん

本記事は2014年7月6日13時より、ICC Cross×Gardenで開催されたCSS Nite in SAPPORO, Vol.14「選ばれるECサイト」の参加レポート三弾です。鷹野雅弘さんによるsession1『ECサイトのゴールデン・サークル〜こんなECはイヤだ!〜』についての内容から『「なぜあなたはそのサイトで買いましたか?」ユーザー目線で考えるECサイト差別化3つのヒント』と題して内容の一部を紹介します。

鷹野雅弘さんは株式会社スイッチという制作会社を経営。ご自身はWebサイトの構築やコンサルティング、WebやDTPに関しての講演やトレーニングの他、スクールなどのカリキュラム開発も手がけられ多くの書籍も書籍も執筆されています。鷹野雅弘さん書籍一覧

鷹野雅弘さんはセッション冒頭、Amazonで11年総計、約556万円の買い物経験を公開。自身のECサイト利用経験を活かし「利用者目線でのECの今」を話します。

スターバックスはコーヒーを売っているのではない

鷹野雅弘さんは話題の書「WHYから始めよう」という本を紹介し、まずは「WHY」の大切さを説明します。

「例えば商品について。WHATのスペックを紹介するのではなくて、元となるコアのメッセージ、WHYから紹介したほうがいい」

引用元 : Why Most Marketers Have Online Demand Generation All Wrong

スターバックスのCEO、ハワード・シュルツは「スターバックスはコーヒーを売っているのではない。コーヒーを提供しているのではない。職場でもなく家庭でもない「第3の場所」を提供している」と語っています。

スターバックスはWHATであるコーヒーを売っているのではなく(WHAT)、WHYである「第3の場所」の提供を意識しています。

ECの「WHY」はどこにある?

スターバックスでのWHYは「第3の場所の提供」でした。ではECのWHYはどこにあるのでしょうか? 鷹野雅弘さんは「ECのWHYとは買うことによる問題解決」だと話します。

ではもっと踏み込んでみます。買うことによる問題解決とは、どのような問題解決でしょうか。「決まっている場合と、迷っている場合に変わってきます」と鷹野雅弘さんは分類しました。

決まっている場合

欲しい商品が決まっている場合、ユーザーがまず気にするのは価格でしょう。「安く買いたい」という場合、最近のユーザーが見るのは「価格.com」ではないのでしょうか。

他にもAmazonや楽天のモール型ECで、安い価格順でソートを行えば安い商品を見つけるのは容易です。

鷹野雅弘さんは価格についての現実を話します。「今まで、店に行って調べなければいけない価格というものが価格.comを見ればがわかる。一番安い店がすぐわかる。安さだけの訴求では安いほうに流れてしまう。それ以外のバリューをどこに持っていくかがECでは大事になってくる」

例えば、下記のグラフは7月26日時点で家電ランキング1位の「CS-224CF」というエアコンです。

価格.com – パナソニック CS-224CF 価格推移グラフ
引用 : 価格.com – パナソニック CS-224CF 価格推移グラフ

このグラフを見れば価格から、どの店が安く販売しているかということが丸裸です。資本力のあるところや、仕入れに強みを持っているところは別として、価格で勝負することは難しいでしょう。

ではどうやってユーザーにとっての価格以外のバリュー(価値)を提示すればいいでしょうか。

送料

一つ目は送料です。鷹野雅弘さんは「送料で差別化ができるのではないか」と説明します。「例えば5,000円の商品に送料800円であれば仕方ないと思うが、500円の商品に送料800円は高いと感じる。1,000円でも高い。2,000円なら良いという人がいると思う」

Amazonは通常配送料無料です。この配送料無料化によって一部の人に「本をリアル書店で買わず、Amazonで買う」というライフスタイルが定着したでしょう。

Amazon.co.jp:配送料無料 – 便利でお得な配送サービスについて

私がよく利用するブックオフラインでは通常配送料360円ですが、1,500円以上の購入から配送料無料となります。カート画面では以下のように「あと1,302円で送料無料」と出ます。

ユーザーにとってのわかりやすさがありますが、何よりもこのような表示によって、「あと1,302円以上買えば、360円お得だ。この際に買ってしまおう」という心理状況になり、ついつい1,500円以上買ってしまいます。

ブックオフオンラインの画面
ブックオフオンラインの画面

購入する私は360円得した気持ちになり、また、ブックオフライン側もアップセルできたことにより、お互いが得をするという良い体験になるように設計されています。

差別化ポイント1 : 送料

「◯◯円の購入で送料無料」など、できることはないでしょうか。競合より送料は安く設定されていますか? 今一度見なおしてみましょう。

配送

「早く、欲しい」と思うユーザーに対しては配送の点で差別化できます。Amazonの「当日お急ぎ便」に対抗して、楽天の「あす楽」、Yahooの「あすつく」が開始しており、大手各社の配送サービスも激化しています。

ECの即日配達サービスの限界への挑戦 - 頼んだものがすぐ届くのが当たり前の未来はやってくるのか | eコマースコンバージョンラボ
引用 : ECの即日配達サービスの限界への挑戦 - 頼んだものがすぐ届くのが当たり前の未来はやってくるのか | eコマースコンバージョンラボ

鷹野雅弘さんは配送の点で注目したいサービス提供者としてヨドバシ・ドット・コムをあげていました。「ヨドバシカメラ全店舗で受け取り可能」「選べる!配達会社」というサービスがあります。

ヨドバシカメラ全店舗で受け取り可能

ヨドバシ・ドット・コムではネットで注文して、ヨドバシカメラ全店舗で受け取り可能な仕組みがあります。すぐ受け取りたいけど、出掛ける用事があり、近くにヨドバシカメラ店舗があるというときには便利な仕組みです。

選べる!配達会社

ヨドバシ・ドット・コムでは250円の追加で配達会社を選べる仕組みがあります。配達会社は地域担当者が決まっており、地域担当者の相性や良い体験をした、悪い体験をした、ということがどうしてもあるとは思います。配達会社を選べる仕組みによって、自分が最も信頼できる配達会社を選ぶことができます。せっかく購入するのであれば、楽しく、安全に、気持よく買い物をしたいものです。

選べる配達会社の画面
引用 : ヨドバシ.com-配達会社の選択について

差別化ポイント2 : 配送

配送の点で工夫できるところはないでしょうか。自社のECサイトを見なおしてみましょう。

迷っている場合(探している場合)

商品を買おうか迷っている場合、または商品を探している場合、ユーザーはどのポイントから商品を決めるでしょうか。

ユーザーが見る商品の視点と、お店側が見る商品の視点は違います。お店側としては重要な情報は載せたつもりだけど、ユーザーから見ると、情報が不足していることがよくあります。鷹野雅弘さんは自身のECサイト利用経験からいくつか例をあげました。

  • 良さそうなカバンがあった。しかし商品ページにカバンを開けたところの写真がなかったため、中身がわからず購入を断念
  • カバンで「◯リットル入ります」と書かれてもピンとこない。「本ならこのサイズが入ります」「コピー用紙の束だと2つ入る」というほうがピンとくる
  • ノートパソコンを置ける台があったが、商品ページに重さの表記がない。持ち運べるのであれば持ち運ぶ方法の情報がない
  • ノートパソコンを置ける台にiPhoneを置くスペースがあったが、iPhoneケースをつけても置けるのかがわからない

「ECの重要なところは、ECサイト内で完結しなければいけない。買う人の気持ちがわかっていないのではないか」と鷹野雅弘さんは話します。

差別化ポイント3 : 買う人の気持ちにとって、情報を明らかにする

ユーザーが本当に欲しい情報はなんでしょうか。商品を知らない方に商品ページを見せ、疑問に思った点をもらうということもできます。

まとめ

  • 差別化ポイント1 : 送料
  • 差別化ポイント2 : 配送
  • 差別化ポイント3 : 買う人の気持ちにとって、情報を明らかにする

ECサイトのWHY、それはECサイトは単に商品を販売するのではなくて、「ECサイトによる問題解決」です。ユーザーの抱えている問題点を先回りして解決することが大事です。

今回は鷹野雅弘さんからECを差別化する上でのヒントを3点語っていただきました。その他にもさまざまな差別化はあるとは思いますが、まずはこの3つのヒントの中で、できることないかを今一度気にしてみてください。

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1983年9月5日生まれ。北海道札幌市出身・在住。大学卒業後は東京へ。インターネット広告代理店のメディアプランナー、モバイルサービスディレクター経験後、札幌へ帰郷。SEOコンサルタント、iOSアプリディレクター、インバウンドマーケティングディレクターなどの職を経験し、2014年4月、個人事業主として「マーケティスト」を設立