「マーケティング」とは何でしょうか? 「マーケティングって何ですか?」と新入社員や学生に聞かれたら、なんと答えますか?
私が最初に触れたマーケティングの定義は「マーケティングとは売れる仕組みを作ること」という説明でした。いまだにこの定義はマーケティングを求められる説明でもよく使っており、マーケティングを端的に示した良い定義だと考えていますが、調べてみますと、世界にはさまざまなマーケティングの定義があることがわかりました。
本記事では世界の「マーケティング」の定義を紹介します。マーケティング担当の方も、どこまでがマーケティングの業務の範囲なんだろう、と、ふと自分のマーケティング活動を疑問に思うときがあると思います。そのときは見返してみてください。自分なりにしっくりくるマーケティングの定義や考え方を心に刻みましょう。
対象読者 : マーケティング業務を行っている方、「マーケティングとは何か」を知りたい方、マーケティング業務について悩みがある方
この記事を読んで理解できること : 「マーケティングとは何か」を知るヒントになります。
(アイキャッチ画像は By Wasi ahmed02 (投稿者自身による作品) [CC-BY-SA-3.0], via Wikimedia Commons )
目次
アメリカと日本のマーケティング協会が定めた定義
マーケティングには定義があり、マーケティングの定義を定めている組織や人がいます。最も有名なのはアメリカのマーケティング協会が定めたマーケティングの定義です。日本では日本のマーケティング協会が定めたマーケティングの定義も有名でしょう。
では、まずはアメリカのマーケティング協会と、日本のマーケティング協会が定めたマーケティングの定義を見てみましょう。
「マーケティングとは、顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって価値のある提供物を創造・伝達・配達・交換するための活動であり、一連の制度、そしてプロセスである。」
アメリカ・マーケティング協会(AMA;American Marketing Association)2007年の定義
「マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である。」
日本マーケティング協会
理解できますでしょうか。この定義を読み、理解できた方、ピンとくる方はこちらの定義を心に刻んでいただくのが良いでしょう。
しかし、多くの方は読んでも、いまいちピンとこない部分があるのではないでしょうか。私もピンときません。どうしてピンとこないかというと、あらゆるマーケティングについて正確にまとめすぎていて、婉曲表現になっているのです。
なぜこのような表現になっているかというと、一つの理由としては非営利団体にも活用できるマーケティングの定義になっているため、このようになっています。
そのため業務にはすぐ役に立ちづらい定義になっています。そこで「すぐ業務に役に立つ」「上司にマーケティングについて説明するとき」「お客さんにマーケティングについて説明するとき」などすぐに役に立ちそうなマーケティングについての定義をまとめてみました。
マーケティングの様々な定義
それでは世界のマーケティングの定義を紹介します。アメリカ・マーケティング協会の過去の定義から、世界のマーケティングの偉人、日本のマーケティングの定義を一気に紹介します。
「マーケティングとは、個人と組織の目標を満足させる諸交換を創造するために、アイディア・財・サービスの概念形成・価格付け・プロモーション・流通を計画・実行するプロセスである。」
アメリカ・マーケティング協会(1985年)
「マーケティングとは、企業及び他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である。」
アメリカ・マーケティング協会(1990年)
「マーケティングとは、製品と価値を生み出して他者と交換することによって、個人や団体が必要なものや欲しいものを手に入れるために利用する社会上・経営上のプロセス」
フィリップ・コトラー
「マーケティングの究極の目標は、セリング(売り込み)を不要にすることだ」
「マネジメント〈エッセンシャル版〉」P.F.ドラッカー著,ダイヤモンド社
「マーケティングとは、顧客の創造である」
セオドア・レビット
「個人や組織が, 製品及び価値の創造を行い, 市場での交換を通じて, 自らの欲求を満たすために行う様々なプロセスのことである」
日本オペレーションズ・リサーチ学会
「マーケティングは、業務の効率(利益の効率)をアップさせる科学的手法といえます。売れるための仕組みづくりともいわれています。よく、宣伝や販売促進活動がマーケティング活動と思われているようですが、本来は、顧客のニーズを満足させるための活動といえます。」
ニーズ創造研究所
「マーケティングとは、顧客の創造、維持を目的とする企業が、その目的を満たすような交換を顧客とのあいだに生み出すために、アイデアや財やサービスの考案から、価格設定、プロモーション、流通に至るまでを計画し実行するプロセスです。」
ミツエーリンクス – マーケティング用語集より
「消費者の求めている商品・サービスを調査し,供給する商品や販売活動の方法などを決定することで,生産者から消費者への流通を円滑にする活動。」
三省堂大辞林
他にも様々な定義があります。良かったら、調べてみてください。
本サイトでのWebマーケティングの定義
別記事「Webマーケティングとは?Webマーケティングの定義を考える」に詳しく記載しましたが、セルジオジーマン著「そんなマーケティングなら、やめてしまえ!マーケターが忘れたいちばん大切なこと」で紹介しているマーケティングの定義を参考にし、Webマーケティングの定義を定めました。
“マーケティングを行う唯一の目的は、より多くの人々に、より高い頻度で、より多くのお金を使わせ、自社商品を買ってもらうことである。”
「そんなマーケティングなら、やめてしまえ!マーケターが忘れたいちばん大切なこと」「P15 第一章 なぜマーケティングが必要なのか?もちろん、利益を出すためである」より
こちらのマーケティングの定義を参考にし、Webマーケティングの定義を以下のように定めました。
「Webマーケティングとはより多くの人々に、より高い頻度で、より多くのお金を使わせ、自社商品を買ってもらうWeb上の活動のことである」
「そんなマーケティングなら、やめてしまえ!マーケターが忘れたいちばん大切なこと」で参考になるマーケティングの考え方
「そんなマーケティングなら、やめてしまえ!マーケターが忘れたいちばん大切なこと」は全てのマーケティング業務従事者が読むべき名著だと思います。その中でマーケティング業務に携わる方がぜひとも心に入れたほうが良い内容を引用させていただきます。
“マーケティングとは広告のことではない。マーケティングとはバリ島でコマーシャルを撮影することでもなければ、あるいはまた、ヤシの鉢植えのある高級そうなオフィスで広告代理店にペコペコされながら、自分たちの気まぐれを押し通すことでもない。そんなことは、過去のマーケティングの遺物である。
ところが、多くの人々はまだこれがマーケティングだと思っている。創造性あふれる広告を制作するのに多くの費用をかけ、これをテレビの全チャンネルで流し、全世界の新聞や雑誌に自分が作った広告を掲載することがマーケティングだと、自分自身あるいはボスを騙しこんでいる。しかし、それはマーケティングではない。また、マーケティングは、広告以外の多くの関連事項、たとえばパッケージング、プロモーション、市場調査あるいは新製品開発などの総称でもない。マーケターはこれらすべてを行うが、これらはマーケティングを実施するためのツールにすぎない。ツールはマーケティングではない。マーケティングとはツールを使うことであるーーマーケティングとは何をするかを決め、それを達成するための最適なツールを正しい方法で使うことである”
「そんなマーケティングなら、やめてしまえ!マーケターが忘れたいちばん大切なこと」「P16 第一章 なぜマーケティングが必要なのか?もちろん、利益を出すためである」より
“マーケティングとは戦略的な活動であり、より多くの消費者により高頻度でより多くの商品を買ってもらい、その結果、会社がより多くの利益を出すことに焦点を当てた活動である。マーケティングは、単にある目的を達成するために行う戦術の集積ではない。”
「そんなマーケティングなら、やめてしまえ!マーケターが忘れたいちばん大切なこと」「P17 第一章 なぜマーケティングが必要なのか?もちろん、利益を出すためである」より
“マーケティングの任務は、商品をより多く販売し、より多くの利益を上げることである。人々にあなたの商品をより多く、より高頻度で、より高い値段で買ってもらうこと”
「そんなマーケティングなら、やめてしまえ!マーケターが忘れたいちばん大切なこと」「P17 第一章 なぜマーケティングが必要なのか?もちろん、利益を出すためである」より
みなさんもマーケティング業務でときに悩むことがあると思います。そんなときは自分の中に響くマーケティングの文章を読み返してみましょう。